表面処理技術は、素材に新たな機能や価値を与えるだけでなく、私たちの暮らしの安全性や持続可能性を支える重要な要素です。中でも「錫メッキ(スズメッキ)」は、環境負荷の低いめっき材として再評価が進む存在です。今、その柔らかく白い金属が、未来のものづくりの姿を変えようとしています。
錫メッキ(スズメッキ)とは何か?
錫メッキ(スズメッキ)は、鉄や銅、黄銅などの基材の表面に錫(Sn)を被覆する処理です。古くから食品容器(缶詰)や電子部品に利用され、無毒・非アレルゲン・リサイクル性が高いといった特長を持ちます。
環境に優しい理由
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無毒で人体に安全 鉛やクロムと異なり、スズは人体への毒性が極めて低く、食品業界でも長年使用されています。
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排水処理が容易 錫メッキ(スズメッキ)は、有害な六価クロムやシアン化合物を含まないプロセスが確立されており、排水処理の簡素化・コスト削減・環境リスクの低減につながります。
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リサイクルしやすい スズは都市鉱山としても注目されており、分別・再資源化が比較的容易です。
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電気代や化学薬品使用量の削減 無電解処理や低温プロセスの導入により、エネルギー消費の削減も期待できます。
錫メッキ(スズメッキ)用途の広がりと技術革新
近年では、以下のような分野でスズメッキの応用が広がっています。
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電子部品(端子・コネクタ):鉛フリー化の流れにより、スズ合金めっきが主流に。
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自動車業界:耐腐食性とはんだ付け性に優れ、EV部品への応用が拡大。
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建材や住宅設備:意匠性と耐久性のバランスが良く、デザイン建築にも採用。
さらに、マット仕上げ、合金化(Ni-Sn, Zn-Snなど)、多層めっき技術の進化により、用途と性能の幅が格段に広がっています。
未来に向けて
サステナビリティが企業価値に直結する時代、スズメッキは「機能性×環境性」を兼ね備えた材料として、ESG(環境・社会・ガバナンス)経営の一翼を担う存在です。「鉛の代替」「クロムフリー化」「めっき工程の省エネルギー化」など、多くの課題に対して、スズメッキは現実的かつ有効なソリューションを提供してくれます。
未来志向の表面処理としての錫(スズ)
金属表面処理は、目に見えない技術ですが、社会のあらゆる場面で静かに未来を支えています。スズメッキは、**「やさしい金属」**として、環境への負荷を最小限に抑えながら、高機能なものづくりを可能にする技術です。その穏やかな光沢の奥に、私たちが目指す持続可能な社会のヒントが隠れているのかもしれません。
コラム: 金メッキ製品の再利用が拓く持続可能な未来
![]() 株式会社コダマ 専務取締役 児玉義弘 特級めっき技能士・毒物劇物取扱責任者・公害防止管理者(水質2種) |
職人が語るコラム 解説者めっき職歴30年以上 父が創業のメッキ加工工場で小学生の時からラッキング作業・メッキ加工に関わる。大学卒業後は、電子部品のメッキ加工を得意とされる東京のメッキメーカーにて修行し、メッキ技術と経営ノウハウを学ぶ。 コダマ入社以来、現場、品質保証、新規営業を担当し、現在は新卒採用活動、新規事業の検討、戦略の立案などに注力している。
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