金メッキ製品の再利用が拓く、持続可能な未来
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金は、その美しさと高い導電性・耐食性から、電子機器や装飾品、医療機器に至るまで、さまざまな分野で使用されています。
しかし、私たちが日常的に目にする「金メッキ製品」は、ほんのわずかな金を薄く施したものに過ぎません。この“わずか”を軽視せず、再利用・回収に目を向けることが、実は地球環境の未来を左右する重要な一歩になるのです。
都市に眠る金属資源 ― いわゆる「都市鉱山」 2025年5月現在の金の価値は、およそ16,868円/gとなっています。 金の価値 資産としての金と金メッキ製品 |
捨てられる金、掘り返される地球
金メッキ製品は、使用後に廃棄されることが多く、その多くが埋立や焼却に回されています。けれども、金の採掘には膨大な環境負荷がかかることをご存じでしょうか。
たとえば、わずか1グラムの金を採るために必要な鉱石はおよそ1トン。さらに、水銀やシアン化合物など有害な薬品を使用する精錬工程も、周辺環境や人体に深刻な影響を及ぼします。これらの代償を払いながら新たな金を掘る一方で、すでに社会の中で使われている金が回収されずに失われているのです。
再利用は、環境負荷を最小化する資源循環のカギ
再利用やリサイクルの技術は年々進化しており、金メッキ製品からでも有用な資源の回収が可能です。特に基板やコネクタ、IC端子といった電子部品の金メッキ層は、精錬工程によって高純度の金として回収できます。製造業においても、金メッキ品を分別・回収・再精製する仕組みを持つことが、企業の環境責任(ESG)の一環として強く求められています。これは単なるコスト回収ではなく、次世代に資源を引き継ぐ責任ある行動なのです。
小さなメッキが変える、大きな未来
金メッキ製品の再利用は、一つひとつは小さな行為に見えるかもしれません。しかし、年間数万トン規模で生産される電子機器の中に含まれる金を回収できれば、新たな採掘を減らし、自然環境や人々の生活を守ることにつながります。今、製品設計段階からリサイクルを前提とした「サーキュラー・エコノミー(循環型経済)」の視点が必要です。
金メッキ製品はその象徴と言っても過言ではありません。
まとめ:環境負荷ゼロの「都市鉱山」へ
都市に眠る金属資源 ― いわゆる「都市鉱山」の有効活用が、日本を含む先進国の環境戦略における核心テーマとなっています。製造現場での分別と回収、消費者による廃棄品の適正な分別、そして再資源化技術への投資。これらが一体となって初めて、金メッキ製品の真の価値が未来に生きるのです。
コラム: 金の価値 資産としての金と金メッキ製品
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![]() 株式会社コダマ 専務取締役 児玉義弘 特級めっき技能士・毒物劇物取扱責任者・公害防止管理者(水質2種) |
職人が語るコラム 解説者めっき職歴30年以上 父が創業のメッキ加工工場で小学生の時からラッキング作業・メッキ加工に関わる。大学卒業後は、電子部品のメッキ加工を得意とされる東京のメッキメーカーにて修行し、メッキ技術と経営ノウハウを学ぶ。 コダマ入社以来、現場、品質保証、新規営業を担当し、現在は新卒採用活動、新規事業の検討、戦略の立案などに注力している。
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