防錆処理にはどのようなものがありますか
メッキ加工工程には、前処理工程→メッキ工程→後処理工程と順番に工程が進んでいきます。後処理工程の中で防錆処理は、メッキ皮膜表面に化学的に不活性な皮膜を形成させて、外的環境からの表面腐食を防止し、メッキ表面の性能や外観を維持する役割があります。防錆処理方法としては、大別して次の2通りがあります。

防錆 亜鉛メッキ 黒色
メッキ皮膜表面に酸化物、硫化物、その他、無機化合物の化成処理皮膜を形成させ、 その結果、 腐食環境下で化学的に不活性な不動態皮膜となって防錆する方式
メッキ皮膜の種類により、 酸化皮膜を形成する熱処理法やクロム水和酸化物を形成する6価のクロム酸または3価クロムによる化成処理、リン酸塩皮膜を形成するリン酸塩化成処理およびクロムと同様に造膜作用を持っ珪酸塩やイソボリ陰イオン形成金属であるタングステン、 モリプデン、さらにはケイタングステン 酸塩などを含むクロムフリー化成処理などがあります。処理条件としては、浸せきまたは電解処理があります。
有機化合物をメッキ皮膜表面に吸着させて、 あるいは結合させて、 外気との接触を絶縁して防錆する方式
有機化合物をメッキ皮膜表面に吸着させ、あるいは結合させて、外気との接触を絶縁して防錆する方式には、 いろいろな有機化合物が考えられます。
例えば、 金属との結合性が高いイオウを含むトリアジンチオール、チオカルバミン酸誘導体、メルカプトべンゾチアゾール系のものがある。
また、窒素環式化合物であるべンゾトリアゾール系も効果的である。その他、高分子力ルポン酸系やアミド系の界面活性剤もあります。
黄銅素材上のニッケル/金メッキ製品の封孔処理について
金メッキ膜厚が0.5μm以下の場合、下地のニッケルメッキが正常であっても金メッキが薄いため、メッキ表面にはニッケル界面に達するピンホールが多数存在しています。
素材欠陥などで素材まで達するピンホールがあると硝酸ばっ気試験を行なうと、黄銅素材が大きく腐食してクレーター状の腐食孔が生成されてしまう。
このような状態では封孔処理の効果は期待できないのに対して金メッキのみのピンホールであれば下地ニッケルが硝酸に溶解して金めっき皮膜との間でニッケルメッキ表面層の溶解が起こり金メッキ層との間で”ふくれ”が発生する程度の腐食が起こる。
素材まで達するピンホールの存在とは明らかに違いがあります。硝酸ばっ気試験で素材まで達するピンホールが皆無になるように素材欠陥を化学研磨等で修復してからめつきを施し、有機化合物の吸着などによる封孔処理を施すことにより防錆処理としての大きな効果が期待できます。
弱電・電子機器部品の金メッキ仕上げにおいて、耐食性評価の一つに「金メッキの硝酸ばっ気試験方法 JSH8620がある。この試験方法は過酷で通常AuO.764m以上でないと下地Niメッキ層の腐食あるいは素材の腐食が起こると考えられています。
![]() 株式会社コダマ 専務取締役 児玉義弘 特級めっき技能士・毒物劇物取扱責任者・公害防止管理者(水質2種) |
職人が語るコラム 解説者めっき職歴30年以上 父が創業のメッキ加工工場で小学生の時からラッキング作業・メッキ加工に関わる。大学卒業後は、電子部品のメッキ加工を得意とされる東京のメッキメーカーにて修行し、メッキ技術と経営ノウハウを学ぶ。 コダマ入社以来、現場、品質保証、新規営業を担当し、現在は新卒採用活動、新規事業の検討、戦略の立案などに注力している。
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