錫メッキ加工(スズメッキ)の合金メッキ(装飾用・防食用・機能用)

スズ合金メッキの種類と特徴|ウィスカ・はんだ付け性・用途を比較

スズ合金メッキは、スズにビスマス、銀、銅、ニッケル、コバルトなどの金属を組み合わせることで、純スズメッキの特性を調整する表面処理です。

主に次のような目的で採用されます。

  • 電子部品のはんだ付け性を確保したい

  • 純スズメッキのウィスカ発生リスクを低減したい

  • 鉛を使用しない鉛フリー仕様にしたい

  • コネクタや端子の接続信頼性を向上させたい

  • 耐食性や外観を改善したい

合金の種類によって融点、はんだ付け性、ウィスカの発生傾向、コストなどが異なるため、製品の用途や使用環境に合わせた選定が重要です。

純スズメッキとスズ合金メッキの違い

純スズメッキは、はんだ付け性、導電性、耐食性に優れ、コネクタ、端子、バスバー、電子部品などに広く使用されています。

一方、純スズメッキでは、皮膜の内部応力や素材との金属拡散などにより、ウィスカと呼ばれる細い針状結晶が発生することがあります。

ウィスカが成長して隣接する端子に接触すると、電子回路の短絡や接触不良につながる可能性があります。そのため、高い信頼性が求められる電子部品では、スズ合金メッキや下地ニッケルメッキ、熱処理などを組み合わせた対策が検討されます。

機能用スズ合金メッキの比較

種類 代表的な組成例 融点の目安 ウィスカ 主な用途
純スズメッキ Sn 約232℃ 対策を検討 コネクタ、端子、バスバー、外装部品
スズ-ビスマスメッキ Sn-Bi 約221℃※ 抑制が期待できる 電子部品、端子、コネクタ
スズ-銀メッキ Sn-Ag 約221℃※ 抑制が期待できる ウエハバンプ、電子部品、接合部品
スズ-銅メッキ Sn-Cu 約227℃※ 使用条件に応じて対策 コネクタ、基板、電子部品

※合金の組成によって融点や特性は変化します。

純スズメッキ 

L型接続板 錫メッキ加工事例
L型接続板 錫メッキ加工事例

純スズメッキは、優れたはんだ付け性と比較的低いコストを持つ、代表的な機能メッキです。コネクタ、端子、バスバー、電気接点、基板部品などに使用されます。一方で、使用環境や素材、皮膜の内部応力によってはウィスカが発生する可能性があります。用途に応じて、半光沢スズメッキ、下地ニッケルメッキ、ベーキング処理、膜厚管理などを検討します。

スズ-ビスマスメッキ(Sn-Bi)

スズ-ビスマスメッキは、鉛を使用しない鉛フリーのスズ合金メッキです。純スズメッキと比べてウィスカの発生を抑制する効果が期待でき、電子部品、コネクタ、端子などへの採用が検討されます。ただし、ビスマスの含有量や接合条件によって、はんだ接合部の特性が変化するため、使用するはんだ材料やリフロー条件を確認する必要があります。

スズ-銀メッキ(Sn-Ag)

スズ-銀メッキは、鉛フリーはんだとの親和性や接合信頼性を重視する用途で使用されるスズ合金メッキです。ウィスカの発生を抑制する効果が期待でき、ウエハバンプ、電子部品、接合部品などに使用されます。銀を含有するため、純スズメッキやスズ-銅メッキと比較して材料コストが高くなる場合があります。

スズ-銅メッキ(Sn-Cu)

スズ-銅メッキは、鉛フリー仕様として電子部品、コネクタ、基板などに使用されます。銀を使用する合金と比較して、材料コストを抑えやすいことが特徴です。一方で、皮膜の状態や下地、保管環境などによっては、酸化やウィスカへの対策が必要になります。下地ニッケルメッキや皮膜構成、膜厚などを含めて仕様を検討します。

装飾用のスズ合金メッキ

装飾用途では、外観や色調、耐食性、ニッケル代替などを目的として、次のようなスズ合金メッキが使用されることがあります。

スズ-コバルト合金メッキ

スズ-コバルト合金メッキは、ニッケルクロムメッキに近い外観を得る目的で使用されることがあります。

装飾部品や外観部品などに採用されますが、要求される色調、耐食性、素材との密着性を確認したうえで仕様を決定する必要があります。

スズ-ニッケル合金メッキ

スズ-ニッケル合金メッキは、外観、耐食性、硬さなどを付与する目的で使用されます。

電子部品や装飾部品などへの適用例がありますが、ニッケルを含むため、製品の使用目的や規制条件を確認することが重要です。

スズ-銅-亜鉛合金メッキ

スズ、銅、亜鉛を組み合わせた合金メッキは、組成によって色調が変化するため、装飾用途に使用されることがあります。

要求する外観や耐食性に応じて、合金組成や下地メッキを選定します。

防食用のスズ合金メッキ

防食用途では、スズ-亜鉛合金メッキなどが使用されることがあります。

スズと亜鉛の特性を組み合わせることで、鉄鋼部品などの耐食性向上を目的として使用されます。

ただし、使用環境、相手材、温度、湿度、要求耐食時間などによって適切なメッキ仕様は異なります。

スズ合金メッキを選定するときのポイント

スズ合金メッキは、合金名だけで選定するのではなく、次の条件を確認する必要があります。

1.はんだ付け方法

こてはんだ、フローはんだ、リフローはんだなど、はんだ付け方法によって必要な皮膜特性が異なります。

使用するはんだ材、加熱温度、フラックス、保管期間なども確認します。

2.ウィスカに対する要求

車載部品、電子部品、精密機器など、短絡が重大な不具合につながる製品では、ウィスカリスクを考慮した仕様設計が必要です。

合金メッキだけでなく、下地ニッケルメッキ、熱処理、膜厚、素材、曲げ加工の有無なども含めて検討します。

3.素材

銅、黄銅、鉄、ステンレス、アルミニウムなど、素材によって適切な前処理や下地メッキが異なります。

特に銅や銅合金では、スズとの金属拡散を抑える目的でニッケル下地を検討することがあります。

4.使用温度と接続条件

製品の使用温度、通電電流、接触圧力、挿抜回数などによって必要な皮膜性能が変わります。

コネクタや端子では、はんだ付け性だけでなく、接触抵抗や摩耗、変色についても確認します。

5.環境規制

RoHS指令などの環境規制に対応する場合は、鉛などの規制対象物質を含まない仕様か確認する必要があります。

要求される分析方法、証明書、含有物質調査の有無も事前にご提示ください。

スズ合金メッキの仕様選定をご相談ください

スズメッキは、合金の種類だけでなく、素材、下地メッキ、膜厚、熱処理、はんだ付け条件、使用環境を含めて仕様を検討することが重要です。

株式会社コダマでは、図面や製品用途を確認したうえで、スズメッキ、下地メッキ、膜厚、ウィスカ対策などをご提案します。

次の情報をご用意いただくと、仕様検討やお見積りがスムーズです。

  • 製品図面

  • 素材

  • 製品サイズ

  • 数量

  • 希望膜厚

  • はんだ付け方法

  • 使用温度

  • ウィスカに関する要求

  • RoHSなどの環境規制

  • 試作または量産の区分

スズ合金メッキの対応可否を含め、まずはお気軽にお問い合わせください。

錫メッキ加工(スズメッキ)の合金メッキ(装飾用・防食用・機能用)

装飾用のスズの合金メッキ

スズーコバルト合金メッキはスタネート浴、ピロリン酸浴、フッ化物浴があります。外観がニッケルクロムメッキに近いことから、代替ニッケルクロムとして使用されることもあります。その他には、スズーニッケル合金メッキ(ピロリン酸浴、フッ化物浴)、スズーニッケルー銅合金メッキ(ピロリン酸浴)、スズー銅ー亜鉛合金メッキ(シアン浴)などがあります。

防食用の錫の合金メッキ

スズー亜鉛合金メッキ(有機カルボン酸浴、シアン浴)があります。

機能用の錫の合金メッキ

  純スズメッキ スズービスマスメッキ  スズー銀メッキ スズー銅メッキ
使用用途 外装部品、コネクタ 外装部品、コネクタ ウエハバンプ コネクタ、基板
融点 232℃ 221℃(ビスマス2.0wt%) 221℃(銀3.5wt%) 227℃(銅0.7wt%)
ウイスカ 対策が必要 良好 良好 対策が必要

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特級めっき技能士 児玉義弘
株式会社コダマ 専務取締役 児玉義弘 特級めっき技能士・毒物劇物取扱責任者・公害防止管理者(水質2種)

職人が語るコラム 解説者

めっき職歴30年以上 父が創業のメッキ加工工場で小学生の時からラッキング作業・メッキ加工に関わる。大学卒業後は、電子部品のメッキ加工を得意とされる東京のメッキメーカーにて修行し、メッキ技術と経営ノウハウを学ぶ。

コダマ入社以来、現場、品質保証、新規営業を担当し、現在は新卒採用活動、新規事業の検討、戦略の立案などに注力している。

 

 

 

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