メッキの品質不良 乾燥工程 シミの発生原因と対策
メッキ加工の不良モードで多いのが、シミが製品に残っていたという不良があります。メッキ加工が終わり、水洗を重ね、最終水洗工程はメッキ処理液の残留を完全に無くした状態で乾燥工程に移行する必要があります。
最終水洗には、イオン交換水やRO 水を用い、電導度を数10 s/cm以下の精製水にした状態でも乾燥工程でメッキ表面にシミといった外観不良の品質トラブルを引き起こすことがあります。乾燥工程の役割は、メッキの仕上がりの最終段階で完全に水濡れしている金属表面から、水素結合または水和している状態の水を除去して乾燥面を形成することです。注意点は、水分を蒸発させて乾燥させないということです。金メッキ加工の場合は、金メッキ浴の直前の水洗工程では、金メッキ浴に不純物を持ち込まない観点から、純水を導入することがオススメです。
いくら純水で洗浄してもメッキ表面に熱を加えて水分を蒸発させると、水分が蒸発していく間の時間経過で大気中のいろいろな汚れを溶かし込みながら濃縮していき、特にイオン性の汚れを巻き込んだ場合は腐食を誘発する場合があります。非イオン性であっても蒸発残渣として表面に残り”シミ”の原因になりやすいと言われています。
乾燥工程では、水の蒸発時に空気中の汚れが溶け込み乾燥し「乾燥湯じみ」が発生します。ポイントは、いかに水分を短時間で吹き飛ばすかということが重要です。環境規制がかかる前、フロンやトリクレンなどの有機溶剤を使用していた場合は、蒸発しやすく速乾性ですので、シミの品質トラブルは皆無でした。
乾燥工程で起こり得るメッキ表面の”しみ”対策
遠心分離式脱水機や真空乾燥機が効果的
水分をできるだけ瞬間的に飛ばしてしまう工夫をする。乾燥空気をメッキ表面に吹き付けるなどしてできるだけ乾燥状態の空気を供給する。遠心分離式脱水機や真空乾燥機が効果的です。
高温乾燥は避ける。乾燥機内温度をできれば80 ℃付近
②メッキ皮膜の性能や機能をできるだけ正常に保っためには、乾燥機内温度をできれば80 ℃付近を保ちながら乾燥させる工夫と管理が重要です。金属表面は水分が飛んで乾燥するに伴い大気中では酸化皮膜形成が進みます。その皮膜はできるだけ薄く清浄な状態で形成したいので、あまり高温乾燥は避けなければいけません。
定期的な清掃や維持活動
乾燥機内にイオン性のガスなどが入り込まないように、例えば、塩化水素ガスやミストを発生させるような処理液を乾燥機周辺から遠ざけたり作業場内の風向きによってレイアウト変更対策と管理が必要になります。定期的な乾燥機内の清掃や腐食有無の点検をして改善と適切な維持管理を心掛けることが乾燥工程の重要な管理項目になります。
環境のよい場所で保管
乾燥工程では極力短時間での乾燥を心掛け、乾燥したらできるだけ速やかに環境のよい室温付近の仕上り保管場所に移動させる。
参考文献:めっき加工のツボとコツ Q&A 星野芳明 著