メッキの密着のしくみ 金属結合をさせて密着
水の性質をもっている最も小さな粒子を水の分子といいます。水は2つの水素原子と1つの酸素原子から成り立っている(エッチツー・オー)ので、水を電気分解すると陰極から水素ガスが発生し 陽極から酸素ガスが発生して水は減少します。メッキは、電気分解によって分子と原子に別けてメッキされる金属の原子と金属結合をさせて密着させます。
金属サビは非金属なので表面がサビているときは、 金属結合にならないので、密着不良になります。メッキの密着を良くするためにはメッキ浴中で被メッキ物表面が清浄であり、金属原子が顔を出している必要があります。
素材とメッキが良好な密着を確保するために必要なこと
メッキ加工工程では、メッキの前処理が最も重要だと言われています。メッキ不良原因の80%はメッキの前処理不良だと昔の職人さんがよく言われていました。塗装などの他の表面処理技術と比べると前処理工程が長く、適切な工程で、注意深く処理しなければなりません。 前処理の目的は、油や酸化被膜を完全に除去し、素材表面を活性化し次工程のメッキが良好に密着できる状態にすることです。
メッキ加工する素材は、鉄、ステンレス、銅、真鍮、アルミなど様々な種類があります。鉄なら鉄用の前処理が必要です。熱処理などにより黒皮が付着している場合は、黒皮除去も必要です。アルミの場合なら、同じアルミでもA5052とADC12の番手や含まれている成分が違えば、前処理も番手に合わせた処理が必要です。このように前処理の方法や工程やノウハウなど無数にあり、前処理のレベルがそのメッキ業者の技術レベルに比例するといっても過言ではありません。
入荷される製品は、油の量が同じではありません。各工程ごとに、脱脂工程の出来栄え、酸処理工程の出来栄えをしっかり確認することがとても大事になっていきます。しかし、前処理が完全でも剥離することがあります。それは、要因の1つにメッキ加工中の作業ミスがあります。
光沢銀メッキ テープ剥離 密着テスト(カッターで切り込みを入れて、切り込み部分にテープを貼り、力強く引っ張ります) |
例えばラックと陰極バスバーとの接触不良、電流断続による二重メッキ、電流過大、メッキ浴成分の不調などがあります。その他には、 厚メッキによるメッキ皮膜の応力(ストレス) 、素地のビンホール中に含まれる異物によるガスの発生、サビの発生によるふくれ現象などによりメッキの密着不良が生じます。これらの多くの作業条件を全部満足させて密着の良いメッキをするには、正しい知識と注意深くメッキ加工をする経験が必要です。
参考文献:初級めっき 丸山 清 著