析出スピードが速いメッキ(金メッキ・銀メッキ)電流効率・電流分布とメッキ厚さ分布について

析出スピードが速いメッキ(金メッキ・銀メッキ)

速いメッキとは、析出速度が速いメッキのことをいいます。特長は電流効率(電流効率とは、実際に析出・溶解した量とファラデーの法則から計算された理論値の比を電流効率と呼びます)が100%に近く、しかもより少ない電気エネルギー(電気量=電流×時間)でより多くの析出量があるものということになります。より短時間で、より厚い皮膜が析出するメッキということです。

 

硬質金メッキ加工事例 リードフレーム

析出スピードが速い金メッキ

 

・例えば10μmの皮膜を電着させるのに必要な電気量で見ると、金メッキは15.7A・分で、銀メッキは15.9A・分で、銅メッキは(酸性浴)は45A・分です。同じ電流を流した場合、電流効率がどれも100%だとしても10μmの膜厚を析出するのに銅メッキは金メッキや銀メッキの3倍の時間がかかるということになります。

硬質銀メッキ加工事例 リードフレーム

析出スピードが速い銀メッキ

電流分布とメッキ厚さ分布とは?

電解メッキの膜厚がなぜ不均一につくのか?それは電流分布によって大きく左右されるからです。電流分布はメッキ加工する製品の形状、陽極との配置等の様々な関係から生じる1次電流分布、電解液側や電解条件に関係する2次電流分布、メッキ製品のミクロな表面状態に関係する3次電流分布に分けることができます。

一般的にメッキ皮膜は凸部は厚くなり、凹部では薄くなる傾向があります。メッキ液の組成、性質、電解条件によって2次電流分布が決まります。アルカリ性のメッキ液は、酸性のメッキ液より均一電着性は良好です(例.アルカリ錫メッキ(均一電着性は良い)> 酸性錫メッキ(均一電着性は普通)その理由としては、高電流部で水素発生が増大した結果、電流効率が低下するからです。

ミクロな凹凸を埋める平滑剤の目的は、レベリング作用(平滑化)と言います。添加剤は微小な凸部に集中的に吸着し、この部分の分極を大きくしてイオンの析出を抑制します。結果として凹部への析出が優先されて平滑になります。

 

代表的なメッキ金属の析出スピード

 

メッキ種 メッキ浴 1A/d㎡・1分の膜厚μm/分 電流効率
金メッキ 中性・シアン浴 0.634 100%
銀メッキ シアン浴 0.638 100%
銅メッキ

シアン浴

硫酸、ピロリン酸

0.333

0.222

75%

100%

錫メッキ

酸性浴

アルカリ浴

0.505

0.18

100%

70%

ニッケルメッキ 酸性浴 0.203 100%
亜鉛メッキ

酸性浴

シアン浴

0.285

0.228

100%

80%

クロムメッキ

弱酸性浴

クロム酸浴

0.02

0.012

13%

15%

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特級めっき技能士 児玉義弘
株式会社コダマ 専務取締役 児玉義弘 特級めっき技能士・毒物劇物取扱責任者・公害防止管理者(水質2種)

職人が語るコラム 解説者

めっき職歴30年以上 父が創業のメッキ加工工場で小学生の時からラッキング作業・メッキ加工に関わる。大学卒業後は、電子部品のメッキ加工を得意とされる東京のメッキメーカーにて修行し、メッキ技術と経営ノウハウを学ぶ。

コダマ入社以来、現場、品質保証、新規営業を担当し、現在は新卒採用活動、新規事業の検討、戦略の立案などに注力している。

 

 

 

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