鋳物・ダイカスト・焼結部品のメッキ前処理|密着不良を防ぐ注意点
鋳物・ダイカスト製品は、通常の鉄・銅・真鍮材よりもメッキ前処理が難しい素材です。巣穴、ピンホール、鋳肌、酸化膜、ケイ素、鉛、チル層などの影響で、メッキ後に膨れ・剥離・密着不良が発生することがあります。そのため、素材ごとの状態を確認し、酸洗、バフ研磨、ストライクメッキなどを適切に組み合わせる必要があります。鋳造とは、鉄やアルミや銅などの合金を溶融したものを、型の空洞部分へ流し込み冷やし固める加工法をいいます。鋳造されたものは、鋳物 (いもの)と呼ばれます。
メッキ前処理が重要な理由
メッキの密着性は、本メッキよりも前処理で大きく左右されます。素材表面に油分、酸化膜、スケール、鋳肌、溶接カス、巣穴などが残っていると、メッキ皮膜が均一に析出せず、膨れ・剥離・ピンホール・変色の原因になります。特に鋳物、ダイカスト、焼結部品、溶接部品は表面状態が複雑なため、通常の脱脂や酸洗だけでは不十分な場合があります。
鋳物にメッキする時の前処理

鋳鉄はケイ素を含むため、通常の酸洗だけでは表面が活性化しにくい場合があります。フッ化物を含む酸処理などで表面を整え、密着性を確保することが重要です。鋳物は巣穴や鋳肌の影響でメッキ液が残りやすく、後からシミや膨れが出ることもあるため、洗浄・水洗・乾燥工程にも注意が必要です。
鋳鉄に対するメッキ前処理の注意点:鋳鉄は成分の中にケイ素が多く含まれているので、フッ化物を添加した無機酸で処理します。
黄銅鋳物のメッキ前処理
黄銅鋳物は鉛を含む場合があり、表面状態によってはメッキ密着が不安定になります。そのため、下地としてシアン化銅ストライクメッキを行うことで、後工程のメッキ密着性を高めやすくなります。黄銅鋳物に対するメッキ前処理の注意点:黄銅鋳物は成分に鉛があるので、下地にシアン化銅ストライクメッキすることが望ましい。
亜鉛ダイカストのメッキ前処理
亜鉛ダイカストは表面に緻密なチル層があり、研磨や酸処理の条件を誤ると密着不良や素材荒れにつながります。バフ研磨では粗すぎる研磨材を避け、表面を荒らしすぎないことが重要です。また、亜鉛は酸性浴で溶解しやすいため、下地にシアン化銅ストライクメッキを行うことで、後工程のニッケルメッキや装飾メッキの密着性を高めます。
亜鉛ダイカストに対するメッキ前処理の注意点:亜鉛ダイカストの表層は緻密なチル層が0.2mmあるので、この層を取り除くためのバフ研磨を行うときはエメリーバフの粒度を250番より細かいエメリーにする。下地にシアン化銅ストライクメッキすることが望ましい。
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鋳物 溶けた鉄を流し固める工法 |
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| 対象素材・状態 | 起こりやすい不具合 | 前処理のポイント | 推奨される下地処理 |
|---|---|---|---|
| 鋳鉄 | 密着不良、剥離、シミ | ケイ素を考慮した酸処理 | フッ化物を含む酸処理 |
| 黄銅鋳物 | 密着不良、変色 | 鉛成分への注意 | シアン化銅ストライク |
| 亜鉛ダイカスト | 剥離、素材荒れ、膨れ | チル層、研磨条件に注意 | シアン化銅ストライク |
| 溶接部品 | 溶接スケール、カス残り | バフ研磨、酸洗で除去 | 状態により下地メッキ |
| 焼結部品 | ピンホール、液残り、膨れ | 多孔質への対策 | 充填処理、封孔処理 |
| 熱処理部品 | 不要部の硬化、寸法不良 | 防止したい範囲の明確化 | 浸炭防止は銅、窒化防止はニッケル・錫 |
溶接部品に対するメッキ前処理の注意点
・スポット溶接: スポット溶接面はバフ研磨加工や酸洗をして、酸化膜の除去をすることがポイントです。
・ガス溶接、アーク溶接、硬ろう付け: これらの溶接はカスが生じるのでバフ研磨加工やフッ酸で完全に除去する必要があります。
焼結部品に対するメッキ前処理の注意点
表面が多孔質で、内部まで隙間が多く通常のメッキ前処理では困難です。対策として、隙間にプラスチックなどを充てんしメッキ後に充填物を取り出すなどの処置があります。
熱処理部品に対するメッキ前処理の注意点
表面硬化を部分的に防ぐ目的で浸炭および窒化防止のメッキを行っています。それぞれのメッキの種類は下記になります。
浸炭防止:銅メッキ
めっき前処理のQ&A
Q1. 鋳物にメッキはできますか?
可能です。ただし、鋳物は巣穴や鋳肌、酸化膜の影響で密着不良が起こりやすいため、素材状態に合わせた前処理が重要です。
Q2. 亜鉛ダイカストにメッキすると剥がれやすいのはなぜですか?
亜鉛ダイカストは表面状態が不安定で、酸や研磨条件の影響を受けやすいためです。下地にシアン化銅ストライクメッキを行うことで密着性を高めやすくなります。
Q3. シアン化銅ストライクメッキは何のために行いますか?
本メッキ前に薄い銅皮膜を形成し、素材と後工程メッキの密着性を高めるために行います。黄銅鋳物や亜鉛ダイカストなどで有効です。
Q4. 焼結部品にメッキはできますか?
可能な場合もありますが、焼結部品は多孔質でメッキ液が内部に残りやすいため、膨れやシミの原因になります。封孔や充填などの対策が必要になることがあります。
Q5. 溶接部にメッキする時の注意点は?
溶接部には酸化膜、スケール、溶接カスが残りやすいため、バフ研磨や酸洗で十分に除去する必要があります。
Q6. 鋳鉄のメッキ前処理で注意することは?
鋳鉄はケイ素を含むため、通常の酸処理だけでは表面活性が不十分な場合があります。素材に合った酸処理条件が重要です。
Q7. 浸炭防止にはどのメッキを使いますか?
一般的には銅メッキを使用します。硬化させたくない部分に銅メッキを施し、炭素の侵入を防ぐ目的で使われます。
Q8. 窒化防止にはどのメッキを使いますか?
ニッケルメッキや錫メッキが使われることがあります。窒化させたくない部分を保護する目的です。
Q9. メッキ前処理が悪いとどんな不良が出ますか?
剥離、膨れ、ピンホール、シミ、変色、密着不良、膜厚ムラなどが発生しやすくなります。
Q10. 図面がなくても相談できますか?
可能です。素材、形状、用途、必要な膜厚、メッキしたい範囲、メッキしたくない範囲が分かれば、適した前処理とメッキ仕様を検討できます。

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職人が語るコラム 解説者めっき職歴30年以上 父が創業のメッキ加工工場で小学生の時からラッキング作業・メッキ加工に関わる。大学卒業後は、電子部品のメッキ加工を得意とされる東京のメッキメーカーにて修行し、電子部品の金メッキ、銀メッキ、スズメッキ、ニッケルメッキ、銅メッキ技術や経営ノウハウを学ぶ。 コダマでは、現場、品質保証、営業を担当し、現在は採用活動、ブランディング、マーケティング戦略に注力している。わくわく!コダマ新聞(ニュースレター)も配信中!
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