メッキ処理の工程管理・品質管理 品質を支える現場の仕組み
メッキ処理は、美観・防錆・電気特性など、製品の品質を左右する重要な工程です。しかし、液の濃度や温度、処理時間など、わずかなズレが大きな不良につながる繊細なプロセスでもあります。メッキ処理における工程管理と品質管理の要点を、実務目線で解説します。
国際品質規格ISO9001、環境規格ISO14001の認証を取得
コダマは、国際品質規格ISO9001、環境規格ISO14001の認証を取得して、品質環境管理システムを進化してきました。毎日実施されている設備点検記録、日常点検チェックシート、定期的に実施される浴管理分析記録、製品ごとに発行される加工指示書や現場工程パトロールなどにより徹底した品質環境管理を実施しています。
品質を支える 4M管理:人・機械・材料・方法
品質管理においては「4M」視点(人・機械・材料・方法)が重要です。4M管理と言われています。
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人(Man): 作業者の教育・標準作業書の整備
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機械(Machine): 定期メンテナンス、センサー設置
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材料(Material): 薬品・基材のロット管理
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方法(Method): 作業手順の見える化、整理・整頓・清掃の徹底
加えて、デジタル記録の活用(IoTによる温度ログ、pHログ)も、トレーサビリティ強化に役立ちます。4M(人・機械・材料・方法)変更の時は勿論のこと、いつもと違うなど、わずかな違いが生じた時は、変化点管理や変更点管理を実施し記録しています。そして何よりお客様との連絡を密にすることで、強固な信頼関係を構築しています。

メッキ加工の品質管理 特性要因図 4M管理の視点
高品質をお約束 品質管理・行程管理力は私たちの命です
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メッキ加工製品は外観検査、膜厚検査など様々な検査を習熟した検査員が実施し、「不良品は外に出さない」体制を構築しています。また、リピート製品に、いつでも対応できるよう、1点1点の製品すべてのメッキ加工条件等を加工指示書に落とし込み「標準化」を図っています。 万が一、トラブルが発生した際にも、即時に対応できるよう、「トレーサビリティ(履歴管理)」を確実に実施しております。 |
品質管理のポイントとは?
品質管理は「不良を未然に防ぐ」ことが目的です。主に次の3つが柱となります。全員参加、事実に基づく活動、三現主義、見える化、ばらつきに注目する考え方、品質の定義、管理の方法、維持と改善、PDCA,継続的改善を行います。
① 入荷検査と材料管理
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基材に異材混入がないかチェック
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表面に油やサビがないか確認
② 工程内検査(インプロセス)
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バス濃度の定期分析(滴定、ICPなど)
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テストピースによる被膜評価(膜厚、密着性、硬度)
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水洗状態や乾燥ムラの確認
③ 出荷前検査
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外観検査(変色、付着物、など)
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X線膜厚計による厚み測定
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ロットトレースと検査記録の保存
メッキ皮膜の環境負荷物質管理
全薬品を自社で定期分析や環境負荷物質管理、金メッキ、銀メッキ、スズメッキ、無電解ニッケルメッキ 硬質クロムメッキなど めっき皮膜のICP分析も毎年実施しています。 金メッキの環境負荷物質ICP分析 例
SPC(統計的工程管理)の導入で安定化
SPC(Statistical Process Control)は、数値データで工程を管理し、「異常の予兆」を捉える手法です。
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メッキ厚みの管理図(X̄-R管理図)で、工程能力を評価
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被膜硬度のばらつき確認で、浴の劣化を察知 不良が出る前に対処できるため、安定生産に直結します。
まとめ:工程を見える化し、未来の不良を防ぐ
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メッキの品質は「結果」ではなく、「工程の積み重ね」によって決まります。工程管理と品質管理を徹底することで、歩留まりの向上、顧客満足、環境負荷の低減へとつながります。
AI活用、 外観検査の自動化(AI画像認識)・プロセス異常の予兆検知・処理条件の最適化・トレーサビリティの強化・品質データのビッグデータ解析と最適条件提案やIoTを活用したスマートファクトリー化も加速し、予測型の品質管理が主流になるでしょう。 |
メッキの定量分析 中和滴定分析
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メッキ液の分析:品質の均一なメッキをするためには、メッキ液の組成を一定に保たなければなりません。化学分析の専門員が、ほぼ全薬品を定期的に定量分析して品質管理しています。薬品ごとに、計画を立てて、毎日、3日おき、7日おき、という様に実施します。分析結果が出たら記録され、速やかに現場の担当者に報告し、補給のタイミングや補給量を指示される体制になっています。
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なぜ「工程管理」が重要なのか?
メッキ工程は以下のような複数ステップで構成されます:
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前処理(脱脂、酸洗い)
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めっき処理(電解 or 無電解)
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後処理(水洗、中和、乾燥)
各工程で温度・pH・濃度・処理時間といった条件が適正に管理されていないと、不良品や性能低下を招きます。
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作業標準化 見える化への取組
顧客の製品別に顧客カルテを作成管理
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お客様から受注した製品は、製品別に顧客カルテを作成されます。顧客カルテにて顧客名、製品名、納期、メッキ仕様、簡易工程の手順、過去トラブルの事例、お客様からの要望や注意点などが記載されます。 1年後に同じ製品を受注した際も過去の履歴や手順が確認できますので、安定的な品質の確保、スピード対応が可能です。
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品質管理と生産管理システムの一元管理
コダマ 巽中工場では、 セールスフォースで生産管理システムとISO品質管理システムを一元管理しています。(ipadの活用 ペーパーレス化の実現)
密着性評価(カッター)テープ試験法
メッキの密着性の評価は、メッキ面にカッターで井の字に切り込みを入れて、粘着性のあるテープをはり付け、急速にかつ強く引きはがすことによって、メッキの密着性を調べる試験方法です。お客様のご要望のある場合に実施しています。
外観検査
製品の外観を定性的に評価します。 メッキ未着、しみ、ムラ、ざら、異物付着などをないかを検査します。裸眼検査、拡大鏡を使用した外観検査があります。
メッキ膜厚測定:蛍光X線膜厚測定器 フィッシャー社 XDAL-FD
![]() メッキ加工の品質管理 膜厚測定 |
メッキ皮膜の厚みを測定する測定器です。X線検出器に、半導体検出器(PIN)を搭載されている高精度モデルです。プログラム機能付き電動式XYステージ搭載しているので自動連続測定も可能です。 多層膜の測定も可能で膜厚測定は非常にスピーディ(10~20秒)に表示されます。非接触測定ですのでサンプルに傷をつけずに膜厚の測定が可能です。膜厚の測定結果は加工指示書や出荷検査成績書に記録されています。
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メッキ膜厚管理
メッキの膜厚は電気メッキの場合、メッキ時間は、計算して求めます。 例えば、(表面積)が30dm2の製品に電解ニッケルメッキを膜厚15μm(0.0015cm)の膜厚をつけたい場合 電流は5A×30dm2(表面積)=150A 、ニッケルの電気化学当量は1.095g/Ah、ニッケルの密度は8.9g/cm2 、電流効率95%から、
0.0015×8.9×3000/1.095×150×0.95=0.255(約15.3分)あくまで計算です。
拡大観察:デジタルマイクロスコープ
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キーエンス VHX-8000シリーズ高解像度&低ノイズを誇る4K CMOSを搭載しています。深い被写界深度、長い観察距離で、目視の外観検査では、見えにくいものも拡大して見ることができます。 観察したものを撮影したり寸法を測定することも簡単にできます。凹凸面や立体物もクリアな画像で観察できるマイクロスコープです。
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レーザ元素分析ヘッド キーエンス EA-300
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AIで異物の物質を特定 マイクロスコープで観察しながら、大気中で気になる箇所をそのまま元素分析できます。数千種類の元素パターンを内部データベースに保有しているため、検出した元素だけでなく、その物質名まで瞬時に示唆します。また、自社での分析結果を蓄積することで、過去に同様の異物が検出された事例を検索することも可能です。
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成分分析:卓上走査電子顕微鏡
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JCM-6000SEM-EDX /日本電子機能豊富な卓上SEMです。電子線やX線を異物や試料に照射して特性X線や蛍光X線のエネルギーを測定することが可能です。 メッキ加工された製品に付着した異物がある時に、どのような元素が(定性)、どれぐらいの量(定量)含まれているかを分析して異物が何か特定することで不良の解析に使用しています。 |
メッキ皮膜の硬さHv測定:マイクロビッカース硬さ試験機
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ミツトヨメッキ皮膜の硬度を測定できるマイクロビッカース硬さ試験機です。評価はダイヤモンド圧子による圧跡の大きさから硬さの程度を数値であらわし評価します。 コダマでは、主に車載 充電端子の銀メッキの皮膜のHv硬度を測定する時に使用しています。銀の皮膜硬度管理の膨大なデータがあり、活かされています。
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関連
メッキの品質管理 耐食性試験・厚さ試験・密着性試験・硬さ試験