SUS素材へのニッケルメッキの未着(低電部・凹部)|不良原因と対策

SUS素材へのニッケルメッキの未着(低電部・凹部)|不良原因と対策

QSUS製品のニッケルメッキを検討しています。他社では製品形状の奥まった凹んだ場所にはメッキが未着になる。つかないと言われました。加工が難しいと断られました。御社では対応できますか。また、どのような不良が起こる可能性がありますか。
A

形状や要求品質を確認したうえで、試作加工から対応します。奥まった凹部、深穴、袋穴、内径部などは、外周部と比べて電流が届きにくく、電気ニッケルめっきの膜厚が薄くなったり、部分的にメッキが析出しなかったりする場合があります。そのため、製品形状、凹部の直径と深さ、要求膜厚、メッキが必要な範囲を確認し、治具方法や製品の向き、陽極との位置関係などを検討したうえで試作を行います。

 

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ニッケルメッキの未着 低電流密度部(凹部)における析出不足不良事例

不良が発生した箇所

製品内面が二段階に凹んでおり、最も奥にある直径約1.5mm、深さ約1.5mmの底面部分で未着が発生しました。

初回加工時の発生率

100個中75個で未着が発生しました。不良発生率は75%でした。

ニッケルメッキ 底部メッキ付着OK品
ニッケルメッキ 底部メッキ付着OK品
ニッケルメッキ底部 メッキ未着NG品
ニッケルメッキ底部 メッキ未着NG品

なぜ凹部にニッケルメッキがつかなかったのか

今回の主な原因は、製品の奥まった凹部が低電流密度部になり、ニッケルメッキを析出させるために必要な電流が十分に流れなかったことだと考えられます。電気ニッケルメッキでは、製品を陰極として電流を流し、表面にニッケル皮膜を析出させます。しかし、電流は製品表面のすべての場所に均一に流れるわけではありません。

一般的には、次のような場所に電流が集中しやすくなります。

・製品の角や突起部分
・陽極に近い面
・外側に張り出した部分
・陽極に直接向いている面

一方、次のような場所は電流密度が低くなります。

・奥まった凹部
・深穴や袋穴の底部
・製品の陰になる部分
・陽極から遠い部分
・狭い溝の内部
・小径の内面部分

今回の製品は、二段階に凹んだ形状の最深部に小さな底面があったため、底部まで十分な電流が届かず、ニッケル皮膜が析出しにくい状態になっていました。

未着の原因として確認する項目

凹部の未着は、製品形状だけで発生するとは限りません。実際の原因調査では、次の項目を確認します。

1.凹部の形状

凹部の直径、深さ、入口の広さ、段差の数を確認します。入口が狭く、奥が深い形状ほど、底部まで電流が届きにくくなります。

2.製品と陽極の位置関係

凹部の入口が陽極と反対方向を向いている場合や、別の製品によって遮られている場合は、底部の電流密度がさらに低下することがあります。

3.治具への取り付け方向

同じ製品でも、治具への取り付け方向や角度によって、凹部内へのめっき液の流れ方や電流分布が変わります。

4.治具の通電状態

治具との接触が弱い、接点が汚れている、製品ごとの接触抵抗に差があるなどの場合、製品全体に流れる電流が不安定になる可能性があります。

5.SUS表面の活性化状態

ステンレスは表面に不動態皮膜を形成します。前処理や活性化が不十分な場合は、凹部だけでなく、製品表面で密着不良や部分的な未着が発生することがあります。

6.凹部に残った気泡

製品の向きによっては、凹部や袋穴の内部に気泡が残る場合があります。気泡が素材表面を覆うと、めっき液が表面に接触できず、その部分だけめっきが析出しないことがあります。

7.めっき液の流れ

狭い凹部では、メッキ液の入れ替わりが悪くなる場合があります。液だまりをシャワーで流す。液の揺動、製品の向き、液流なども確認する必要があります。

今回検討した改善対策

凹部へのめっき未着を改善するため、次の項目を中心に加工条件を見直しました。

1.製品の取り付け方向を変更する

凹部の入口が陽極側を向き、凹部内に電流とめっき液が届きやすくなるように、治具への取り付け方向を検討します。

2.陽極との位置関係を調整する

製品と陽極の距離や向きを調整し、凹部側に電流が流れやすい配置にします。必要に応じて、陽極の配置方法そのものを変更します。

3.補助陽極を検討する

通常の陽極配置だけでは凹部に必要な電流を供給できない場合、凹部の近くに補助陽極を設置する方法があります。ただし、製品寸法が小さい場合や凹部が極端に狭い場合は、補助陽極を設置できないことがあります。

4.高電流密度部への電流集中を抑える

製品の角や外周部に電流が集中しすぎると、凹部へ流れる電流が不足します。遮蔽板などを用いて突出部への電流集中を抑え、凹部側への電流配分を改善する方法を検討します。

5.治具接点を安定させる

接点の位置、接触圧、治具表面の状態を確認し、製品ごとの電流差が小さくなるようにします。

6.気泡が抜けやすい方向にする

凹部内に液だまり空気や水素ガスが滞留しないよう、製品の角度、揺動方法、槽内への投入方法を見直します。

7.前処理条件を確認する

SUS表面の脱脂、酸洗い、活性化、下地めっきなどの条件を確認し、ニッケルメッキが析出・密着しやすい表面状態をつくります。

改善後の結果

治具への取り付け方向、陽極との位置関係、通電条件などを見直し、凹部底面までニッケルめっきが析出する条件を検討しました。改善前は100個中75個で未着が発生していましたが、条件変更後は100個中10個まで減少しました。または、試作条件を見直した結果、凹部底面までニッケルメッキが析出することを確認しました。未着の10個は再メッキ処理して合格。

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特級めっき技能士のチェックポイント

凹部にめっきがついていない場合は、未着部分だけではなく、製品全体の皮膜状態を確認します。

・外周部や角部のメッキが厚くなっていないか
・凹部の入口には析出しているか
・凹部の側面と底面のどこから未着になっているか
・全数で同じ位置に未着が発生しているか
・製品ごとに不良位置が異なっていないか
・未着部分に変色や酸化膜が残っていないか
・気泡の形に沿った円形の未着になっていないか
・治具の取り付け方向と不良位置に関連がないか

全数で同じ凹部に未着が発生している場合は、製品形状や電流分布の影響が疑われます。一部の製品だけに不規則な未着が発生する場合は、治具接点、前処理、気泡、製品の向きなども確認する必要があります。

凹部へのメッキには限界があります

治具、陽極配置、電流条件を調整しても、すべての形状に電気ニッケルメッキを均一に析出できるわけではありません。次のような形状では、電気ニッケルメッキによる対応が難しい場合があります。

・入口に対して極端に深い穴
・非常に小径の袋穴
・陽極を近づけられない形状
・メッキ液や気泡が抜けない密閉形状
・内部全体に均一な膜厚が必要な製品

形状や要求膜厚によっては、電気ニッケルメッキではなく、電流を使用せずに析出する無電解ニッケルメッキの方が適している場合があります。ただし、無電解ニッケルメッキでも、メッキ液が内部に入らない形状や、気泡が残る形状には注意が必要です。製品の使用目的、必要な皮膜特性、膜厚公差を確認したうえで、適切な加工方法を選定します。

試作時にご提供いただきたい情報

奥まった凹部や深穴へのニッケルメッキをご相談いただく際は、次の情報をご提供ください。

・製品図面
・SUSの材質
・凹部または穴の直径と深さ
・メッキが必要な範囲
・必要なニッケルメッキ膜厚
・膜厚の測定位置
・寸法公差
・製品の用途
・試作数量と量産数量
・外観基準
・未着が許容される範囲

特に、「凹部底面まで確実にメッキが必要なのか」「防錆目的なのか」「寸法・機能目的なのか」によって、推奨する加工方法が変わります。

SUS製品の凹部へのニッケルメッキでお困りの方へ

コダマでは、SUS製品へのニッケルメッキ、無電解ニッケルメッキ、銅メッキ、金メッキ、銀メッキなどに対応しています。他社で加工が難しいと判断された深穴、凹部、内径部、複雑形状の製品についても、図面と要求仕様を確認し、試作加工から検討します。

形状によっては対応できない場合もありますが、治具方法、陽極配置、電気メッキと無電解メッキの使い分けなどを含めてご提案します。図面、製品写真、材質、要求膜厚、数量をご用意のうえ、お問い合わせください。

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