アルミの傷は無電解ニッケルメッキで消える?原因と対策

アルミの傷は無電解ニッケルメッキで消える?原因と対策

Qアルミ製品の加工中に薄い傷が入りました。無電解ニッケルメッキを施せば傷は消えますか。
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基本的に、無電解ニッケルメッキだけで素材の傷を消すことはできません。無電解ニッケルメッキは、製品形状に沿って均一な厚さの皮膜を形成する表面処理です。傷の凹部にも、その周囲にもほぼ同じ厚さで皮膜が析出するため、メッキ後も傷の形状が残ります。また、無電解ニッケルメッキによって表面の色調や光沢が変わると、光の反射によって、メッキ前より傷が目立つ場合もあります。

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メッキ後の擦り傷 不良事例
擦り傷 不良事例
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擦り傷 不良事例

無電解ニッケルメッキで傷が消えない理由

無電解ニッケルメッキは、電流を使用せず、化学反応によってニッケル合金皮膜を析出させる処理です。メッキ液が接触する部分には、複雑な形状でも比較的均一な厚さの皮膜を形成できます。しかし、均一に析出するということは、傷の底にも、傷の周囲にも同程度の厚さで皮膜が付くということです。

例えば、素材に深さ10μmの傷があり、その上に10μmの無電解ニッケルメッキを施しても、傷の底と周囲にそれぞれ約10μmの皮膜が析出するため、傷の深さがそのまま残ります。無電解ニッケルメッキは、塗装やパテのように凹部を埋めて平滑にする処理ではありません。

アルミへの前処理で傷は消えますか

アルミ素材に無電解ニッケルメッキを行う場合は、一般的に脱脂、エッチング、スマット除去、ジンケート処理などの前処理を行います。エッチング工程ではアルミ表面がわずかに溶解するため、ごく浅い擦れ跡や光沢差の見え方が変わる場合があります。しかし、次のような傷を確実に消すことはできません。

・爪が引っ掛かる傷
・線状の切削傷
・打痕
・深い擦り傷
・研磨傷

前処理条件を強くして傷を消そうとすると、寸法変化、表面粗れ、過剰なエッチング、密着性低下など、別の問題が発生する可能性があります。そのため、ジンケート処理やエッチング処理を「傷を消すための工程」として使用することはおすすめできません。

傷の見え方が変わる場合

傷そのものが消えていなくても、メッキ前後で見え方が変化する場合があります。

傷が目立たなくなる場合

・傷が非常に浅い
・メッキ後の表面がつや消しになる
・傷と周囲の色調差が小さくなる
・ブラストなどで全体の外観を均一化した
・観察する照明や角度が変わった

傷が目立ちやすくなる場合

・光沢のある無電解ニッケル皮膜を形成した
・傷の方向に沿って光が反射する
・メッキ後に表面の色調が均一になった
・傷が一定方向に並んでいる

メッキ後の外観品質を判断する場合は、傷の深さだけでなく、光沢、表面粗さ、観察距離、照明条件なども決めておく必要があります。

傷を目立たなくするための対策

1.メッキ前に研磨する

傷を除去したい場合は、無電解ニッケルメッキ前に素材表面を研磨します。傷の深さや要求外観に応じて、次の方法を検討します。研磨によって傷を除去する場合は、製品寸法、平面度、真円度、表面粗さへの影響を確認する必要があります。

・ペーパー研磨
・バフ研磨
・ラッピング
・機械加工による表面修正
・ブラスト処理

 

2.ブラストで外観を均一化する

傷を完全に除去できない場合でも、ブラストによって製品全体に均一な梨地を形成すると、傷が目立ちにくくなる場合があります。ただし、ブラストは傷を埋める処理ではありません。深い傷はブラスト後にも残る可能性があり、表面粗さや寸法も変化します。

3.メッキ後に研磨する

無電解ニッケルメッキを厚めに施し、メッキ後に研磨して表面を整える方法もあります。ただし、素材傷が深い場合は、研磨によって傷が消える前に皮膜が薄くなったり、アルミ素材が露出したりする可能性があります。メッキ後研磨を行う場合は、次の内容を事前に決めます。

・傷の深さ
・メッキ前の素材寸法
・研磨後の最小保証膜厚
・完成寸法と公差
・必要な表面粗さ

4.外観基準を明確にする

「薄い傷をなくしたい」という要求だけでは、合否判断が曖昧になります。図面や仕様書には、次のような基準を記載することをおすすめします。見た目を重視する製品では、量産前にメッキ前素材とメッキ後製品の限度見本を作成すると、認識の違いを防ぎやすくなります。

・限度見本による判定
・傷の長さと幅
・光沢度

傷が発生した工程を確認する

メッキ後に傷が見つかった場合、素材加工時の傷とは限りません。次の工程も確認する必要があります。

素材加工時の傷

・切削加工時の工具傷
・旋盤やフライス加工による送り目
・バリ取り時の擦り傷
・測定器具による傷
・製品同士の接触傷

メッキ工程中の傷

・治具への取り付け時の接触
・製品同士の接触
・槽への投入や取り出し時の接触
・水洗かごや容器との接触
・メッキ後の検査や運搬時の擦れ

メッキ後に発生した傷

・梱包時の製品同士の接触
・輸送中の振動
・異物を挟んだ状態での積み重ね
・組立時の工具接触
・ウエスや手袋に付着した異物

傷の上に無電解ニッケル皮膜が析出していれば、メッキ前から存在していた傷である可能性が高くなります。一方、傷の内部でニッケル皮膜が破れ、アルミ素材や下地が露出している場合は、メッキ後に発生した傷の可能性があります。

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