硬質クロムメッキの耐食性 課題と対策 硬質クロムメッキ加工のQ&A
- Q鉄製ロールに硬質クロムめっきを施しましたが、使用中に素地から錆が発生しました。原因と対策を教えてください。現在の仕様は次のとおりです。 ・素材:鉄系材料 ・製品:ロール ・下地処理:液体ホーニング ・表面仕上げ:梨地状の硬質クロムめっき ・めっき厚さ:0.05mm(50μm) ・使用環境:湿気のある環境 使用開始後、表面の一部から錆が発生し、品質上の問題になりました。
- A
硬質クロム皮膜のクラック、表面粗さ、膜厚、密着性、使用環境などが複合的に影響した可能性があります。現在の膜厚は50μmですが、膜厚だけを見て原因を断定することはできません。硬質クロムメッキは皮膜形成時に微細なクラックが発生することがあります。水分や腐食性物質がクラックを通して鉄素地まで到達すると、素地の腐食が始まり、錆が表面に現れる場合があります。特に今回のように、液体ホーニングによって表面を粗くし、梨地状に仕上げた製品では、平滑面と比較して水分や汚れが残りやすくなる可能性があります。
硬質クロムメッキ加工 治具接点部 腐食・変色不良事例

硬質クロムメッキ加工 治具接点部 薄膜による腐食・変色不良 事例 今回考えられる主な原因
1.硬質クロム皮膜のクラック
一般的な硬質クロム皮膜には、内部応力によって微細なクラックが生じることがあります。クラックが素地までつながっている場合、湿気や水分が浸入し、鉄素地の腐食につながります。膜厚を増やすことでクラックの経路が複雑になり、腐食性物質が素地まで到達しにくくなる場合があります。ただし、膜厚を厚くすれば必ず耐食性が向上するとは限りません。皮膜のクラック状態、密着性、表面状態、研磨条件なども確認する必要があります。
2.液体ホーニングによる表面粗さ
液体ホーニングを行った表面には、細かな凹凸が形成されます。この凹凸によって梨地状の外観や必要な表面機能が得られる一方、次のような影響が考えられます。
・水分が表面に残りやすい
・汚れや腐食性物質が凹部にたまりやすい
・素地表面の谷部にめっきが十分形成されにくい
・めっき後の表面に微細な凹部が残る表面粗さが大きい場合、同じ平均膜厚でも、素地の山部と谷部で実際の皮膜厚さに差が生じる可能性があります。
3.膜厚の不足または膜厚のばらつき
指定膜厚が50μmであっても、製品表面のすべての位置に50μm析出しているとは限りません。電気メッキでは、製品形状や陽極との位置関係によって電流分布が変化します。ロールの端部、中央部、段差、治具接点付近などで膜厚差が生じ、局部的に薄い部分から腐食が発生する場合があります。膜厚は、平均値だけでなく、錆が発生した位置を含む複数箇所で確認することが重要です。
4.素地に残っていた傷、ピット、腐食
めっき前の鉄素地に次のような欠陥がある場合、その影響がめっき後にも残ることがあります。
・錆
・腐食ピット
・研削傷
・打痕
・素材の巣
・溶接部の欠陥
・圧延スケール硬質クロムメッキは、素地の凹凸を完全に埋めて平滑にする処理ではありません。素地に深い腐食ピットなどがあると、その部分に薬品や水分が残り、めっき後の腐食原因になる場合があります。
5.前処理または密着性の問題
脱脂、酸洗い、活性化などの前処理が不十分な場合、硬質クロム皮膜の密着性が低下する可能性があります。密着性が悪い部分では、皮膜と素地の間に水分が入り込み、皮膜下腐食が進行することがあります。また、メッキ前処理が強すぎる場合も、素地表面を過度に荒らしたり、腐食させたりする可能性があります。

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